メールやお知らせでよく見かける「お詫びして訂正いたします」という言葉。丁寧で礼儀正しい印象を受けますが、なぜか少し違和感を覚えるという人も少なくありません。その違和感の正体は、謝罪と訂正の“順序”や“文脈”に隠れています。実際に、日常的に使われているものの中には微妙に意味合いが異なるケースも多いんです。たとえば、「訂正してお詫びいたします」との違いを考えると、「どちらが正しいの？」「どう使い分ければいいの？」と迷う方もいるでしょう。
この記事では、その表現の正しさや使い分けのコツを、ビジネスシーンから日常会話まで幅広く解説します。さらに、場面ごとの自然な使い方や印象の違い、相手に誠意を伝える文の組み立て方についても、実例を交えてわかりやすく紹介します。読み終える頃には、「お詫びして訂正いたします」を自信をもって使い分けられるようになりますよ。
謝罪と訂正、どちらを先に伝えるべき？表現の順序が持つ意味
「お詫びして訂正いたします」と「訂正してお詫びいたします」、どちらも聞いたことがありますよね。違いは“順序”にあります。
まず、謝罪は「誤りを認める」行為、訂正は「正しい情報に直す」行為です。つまり、原因（誤り）→結果（訂正） の順で伝えるのが自然。したがって、「お詫びして訂正いたします」が一般的に正しいとされています。
一方、「訂正してお詫びいたします」も誤りではありません。事実を先に伝えたいとき、たとえば「誤字を訂正しました」と先に説明し、そのあとに謝る流れなら自然です。文脈で使い分けることが大切ですね。
この順序の違いは、文章の受け手が受け取る印象に大きく影響します。たとえば、顧客向けのメールでは謝罪を先に書くことで「誠実さ」を、社内報告や修正連絡では訂正を先にすることで「効率性」「明快さ」を伝えられます。つまり、どちらが正しいかではなく、相手の立場に合わせた順序が鍵なのです。
さらに、謝罪の強さを変えることで文章全体のトーンも変わります。「深くお詫び申し上げます」とすれば重い謝罪に、「申し訳ございません」であれば柔らかく聞こえます。相手との関係性や状況に応じて調整しましょう。
加えて、話し言葉では「すみません、訂正しますね」と軽い謝罪を添えることが多く、自然なやり取りになります。一方で、メールや報告書などの書面では「お詫びして訂正いたします」といった正式な形を使うことで信頼感を高められます。口語と文語の違いも意識すると、より伝わりやすくなります。
「訂正」「修正」「変更」の違いを知っていますか？
似た言葉でも意味は少しずつ違います。
- 訂正：間違いを正しく直すこと（例：日付や数字の誤り）
- 修正：より良く整えること（例：表現の改善や加筆）
- 変更：内容そのものを変えること（例：予定や方針の差し替え）
これらの違いを理解することで、相手に対して正確な印象を与え、不要な誤解を防ぐことができます。文書作成の際には「どの言葉が最も適切か」を一度立ち止まって考えることが、丁寧なビジネスコミュニケーションにつながります。
「お詫びして訂正いたします」を使うのはどんな場面？実例で確認
実際にどんなシーンで使うのが適切か、具体的に見てみましょう。場面によって使い方や言い回しのトーンが少しずつ変わります。
- 社内メール：「先日の資料に誤りがございました。お詫びして訂正いたします。」
→ 同僚や上司に対して、誤りを素直に伝えるシンプルな表現。社内では形式ばらず、迅速に訂正を伝えることが大切です。状況によっては「修正済みの資料を添付いたします」と一言添えると丁寧です。 - お客様対応：「ご案内文に一部誤りがございました。深くお詫びして訂正申し上げます。」
→ 顧客に対しては誠実さと責任感を表す言葉が必要です。特に信頼に関わる内容の場合は、「再発防止に努めてまいります」などの補足も入れると安心感が生まれます。 - 公式発表：「掲載内容に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。」
→ 公的・広報文書では簡潔かつ正確さが重要です。必要に応じて「正しい内容は以下の通りです」と具体的な訂正内容を明示します。
また、SNSや社外ニュースリリースなど、読者が多い場面では「どの部分を訂正したのか」をわかりやすく示すことが信頼回復につながります。場合によっては「修正版のリンクを掲載」「再発防止策を添える」など、行動を伴う表現を添えるとより誠実に伝わります。
さらに、文面をまとめる際のポイントとして「感情を先に、訂正を後に」することを意識すると柔らかい印象に仕上がります。たとえば、「誤った情報をお伝えしてしまい申し訳ございません。正しくは以下の通りです。」と分けて書くと、読み手が安心しやすいです。
どの場合も、“まず謝罪、次に訂正”という流れが基本です。文面の長さや媒体に応じて、謝罪の深さや表現の丁寧さを調整するのがポイントです。」
ビジネスメールで使える！実践的な謝罪と訂正の例文集
件名例：
【訂正】ご案内文に関するお知らせ
件名には「【訂正】」「【お詫び】」「【再送】」など、状況に合わせたキーワードを先頭に入れると相手がすぐ内容を把握できます。特にビジネスメールでは、件名のわかりやすさが信頼につながります。
本文例（社外向け）：
平素よりお世話になっております。先日お送りしたご案内文に誤りがございました。深くお詫び申し上げますとともに、以下の通り訂正いたします。
誤：〇月〇日（金）開催
正：〇月〇日（木）開催ご迷惑をおかけしましたことを重ねてお詫び申し上げます。今後は確認を徹底し、同様のミスがないよう努めてまいります。
本文例（社内向け）：
お疲れさまです。昨日送付した企画書内に誤記がありました。お詫びして訂正いたします。正しい数値は以下の通りです。
誤：売上予測 230万円 → 正：280万円
混乱を招き申し訳ありません。最新版を添付しておりますのでご確認ください。
NG例：
訂正いたしますのでお詫びします。
→ 順序が逆で、少し不自然に感じられます。メールでは最初に「誤りがあったことを認めて謝る」ことで誠意を伝え、そのあとで訂正内容を示すと伝わりやすくなります。また、最後に「お手数をおかけしますがご確認をお願いいたします」などの一文を添えると、柔らかく印象が締まります。
言い換え表現を知っておこう！状況別の謝罪フレーズ
- 「申し訳ございません」：広く使える丁寧表現。相手との距離が近い場合でも使いやすく、柔らかく感じられます。文中では単独でも、他の表現と組み合わせても自然です。
- 「深くお詫び申し上げます」：公式文書やお客様向けに最適で、重みのある謝罪にしたい場合に使います。特にミスの影響が大きいときに誠意を伝えられます。
- 「失礼いたしました」：社内・軽い謝罪向け。業務メールや日常的な場面での小さなミス（誤送信や言葉の誤りなど）に適しています。
- 「申し訳ありませんでした」：過去の出来事に対して謝罪する際に使用。再発防止を誓う文と組み合わせるとより効果的です。
- 「お手数をおかけしました」：相手が行動を取ったり確認をしてくれた場合の感謝とお詫びを兼ねる表現です。
状況に合わせてこれらを組み合わせることで、形式的になりすぎず、自然で心のこもった印象を与えることができます。文面のトーンに合わせて使い分けましょう。たとえば、顧客対応では「深くお詫び申し上げます」、社内連絡では「失礼いたしました」、SNS投稿では「申し訳ございません」などが適しています。目的と相手に合わせて言葉を選ぶのがポイントです。
SNSや広報での「訂正・お詫び」投稿の書き方
SNSやWebサイトでは短くても誠実さが伝わる文面が大切です。特に企業アカウントや店舗アカウントでは、謝罪文が拡散される可能性もあるため、言葉選びには注意しましょう。読み手が安心できる構成を意識すると好印象です。
例文：
先日の投稿に誤りがございました。訂正しお詫び申し上げます。今後は確認を徹底してまいります。
このように、「謝罪＋再発防止」をセットにするのが基本です。状況によっては「正しい情報は以下の通りです」「誤った部分を削除しました」など、具体的に訂正箇所を説明すると信頼感が高まります。また、企業の場合は責任者名や部署名を明記することで誠実な印象を与えることもできます。
謝罪文をより丁寧に見せる日本語のコツ
- 「申し上げます」「いたします」など補助動詞を正しく使う。たとえば「ご報告いたします」「お伝え申し上げます」など、言葉の丁寧さを一段階上げることで相手に配慮が伝わります。
- 文末をやわらげたいときは「〜させていただきます」も効果的。命令的にならず、柔らかく受け取られます。例：「訂正いたします」より「訂正させていただきます」とすることで、慎ましい印象を与えます。
- 冗長にならないよう、一文を短くまとめると読みやすい印象に。特に謝罪文では感情を詰め込みすぎず、簡潔で誠実な文体が好まれます。
- 句読点の使い方にも気を配りましょう。読点を適度に入れることでテンポが整い、冷たい印象を避けられます。
- 敬語表現を重ねすぎないこともポイントです。「お詫び申し上げます」を「心よりお詫び申し上げさせていただきます」とすると過剰表現になりやすく、かえってぎこちなく感じられます。
- また、文章全体のトーンを統一することも大切です。最初に重い謝罪語を使った場合は最後までその丁寧さを保ち、軽めの表現で始めた場合は自然体のまま締めると、誠実で一貫した印象になります。
よくある誤用・勘違い例まとめ
| 誤用例 | 正しい表現 | 備考 |
|---|---|---|
| お詫びを申し上げて訂正いたします | お詫びして訂正いたします | 冗長になりやすい例 |
| 訂正いたしますのでお詫びします | 訂正し、お詫び申し上げます | 順序が逆になる例 |
| 訂正申し上げます | お詫び申し上げますと併用でより丁寧に |
謝罪する際の注意点｜信頼を守るための5つのポイント
- 謝罪と訂正の順番を意識する
→ まず「謝る」ことで誠意を示し、その後に訂正内容を明確にします。順序が逆だと「自分の都合を優先している」と誤解されることもあるため注意しましょう。 - 事実を先に伝え、感情を後に添える
→ 謝罪は感情的になりすぎず、事実を正確に伝えることが第一です。その上で、「ご迷惑をおかけして申し訳ございません」と添えるとバランスの取れた文面になります。 - 相手の状況に配慮した文面にする
→ 相手が顧客か上司かによって、使う言葉やトーンを調整しましょう。社外向けには形式的で丁寧な表現、社内向けには簡潔で分かりやすい文が好まれます。 - 定型句に頼りすぎない
→ 定型句ばかりでは心がこもっていない印象を与えてしまいます。具体的な行動や対応を一言加えるだけでも、誠意が伝わります。
例：「今後は確認体制を見直してまいります」「再発防止策を共有しました」など。 - 再発防止の意志を一言添える
→ 謝罪文の最後には、再発防止に向けた姿勢を示す一文を添えると印象が格段に良くなります。たとえば、「今後はこのようなことがないよう十分に注意いたします」「再確認の仕組みを整えます」など。これにより、謝罪が“言葉だけ”ではなく“行動に基づいたもの”だと伝わります。
まとめ 謝罪と訂正は「誠意＋正確さ」で伝わる
「お詫びして訂正いたします」という表現は、正しい順序で誠実さを伝える言葉です。文脈に合わせて使い分ければ、相手に丁寧で信頼できる印象を与えられます。
また、謝罪の言葉は単なる形式ではなく、「相手への気遣い」や「今後への姿勢」を含む大切なメッセージでもあります。どんなに小さな誤りでも、誠実に対応することで関係性を深めるチャンスにもなります。たとえば、取引先とのやり取りやSNS上での対応など、相手が不特定多数の場合ほど、言葉の一つひとつに心を込めることが信頼構築につながります。
さらに、今回学んだ「お詫び→訂正」の順序を意識することで、他のビジネス場面でも応用ができます。たとえば報告書や社内共有資料などでも、先に謝罪を示すことで相手が受け入れやすくなり、訂正や改善の意図が伝わりやすくなります。こうした細やかな配慮が、ビジネスマナーの成熟度を高めるのです。
日常のメールや会話でも、誤りを素直に認め、落ち着いて訂正する姿勢を持てば、相手に「信頼できる人だな」という印象を残せます。正しい言葉づかいと、相手を思いやる心の両方を大切にしていきましょう。
